染料づくり

智頭だけの澄んだ藍色

「朝方はまだ少し冷える」そんな春の初旬、4月頃に蓼藍(タデアイ)のタネを蒔きます。大きくなれ。元気に育て。子を想う母親のような、なんとも温かな気持ちで、そっとタネを蒔いていきます。

タネから育てた智頭だけの藍色

1週間、欠かさず水をやることで、ポツっと小さな芽が顔を出します。とても愛らしい姿です。2週間~4週間かけて、芽はすくすくと育っていきます。生命の強さを感じる瞬間。瑞々しい芽は美しく、何ものにも侵せない力強さを感じさせます。

タネから育てた智頭だけの藍色

5月頃、畑に均等に定植した藍は、太陽の光と雨水の力でますます大きく育ちます。丁寧に畝をつくり、野草を取り除き、牛糞を追肥して、藍が育つ手助けをします。畑作業の途中に、みんなで座り込んでお茶を飲むひと時は、健やかな喜びを全身にもたらします。

タネから育てた智頭だけの藍色

7~8月頃、待ちに待った収穫です。朝露が葉に残る明け方に刈り取り、その日のうちに葉と茎を分け、太陽の下、ゴザの上で葉を乾燥させます。この作業を夏の間に3回行います。収穫は体力勝負の日。一日中、手を動かし続けます。楽しいおしゃべりが作業をはかどらせる秘訣です。

タネから育てた智頭だけの藍色

干した葉は奥深い藍色をしています。藍の色素が葉の中にギュッと詰まっている様子がわかります。ここで茎が入ると染めた色が茶色っぽい色になります。ちずぶるーでは可能な限り葉だけを選別することで、澄んだ藍色を実現しています。

タネから育てた智頭だけの藍色

10月頃、干した葉を1ヶ月程かけて醗酵し自家製造の天然染料「蒅 (スクモ)」を作ります。醗酵途中の藍は湯気がモクモク、とんでもないアンモニア臭です。醗酵を手助けするために、1日1回「切り返し」作業を行います。醗酵している藍の外側と内側を入れ替えるように混ぜる作業です。アンモニア臭に全身を投じる瞬間。しかし臭いに負けてはなりません。この作業が次の年のちずぶるーの「色」を決めるからです。汗をかきながらしっかり「切り返し」をし、十分に醗酵させます。

刈り取りを終えた藍は、秋ごろに可愛らしい桃色の花をつけます。一面が桃色のお花畑。藍の知られざる美しい景色が広がります。この花がタネとなり、霜が降りる頃にタネを収穫します。

タネから育てた智頭だけの藍色

タネは軒下で乾燥させ、次の年に繋いでいきます。尽きることのない、藍の連鎖です。

タネから育てた智頭だけの藍色